2012年8月9日木曜日

日本の原産地表示制度


[原産地 表示制度]
 
 
■ 概念
 
原産地制度とは原産地の決定基準、原産地の表示、原産地証明書の発行、その他それに伴う効果等の規制体系全般を総称しています。
 
原産地証明制度とは、取引商品が特定の国が原産地であることを証明書によって証明する制度であり、通常は関税の特恵を受けるために輸出国の機関が発行する証明書とのことです(例えば、FTA、EPA、GSP等)。特恵のための原産地証明書は発行が義務ではなく、それを具備することができない場合は、特典を受けられないだけです。
 
原産地表示(Country of origin labeling)制度とは、輸出入や、国内の流通において、その製品の原産地がどこなのか、製品に表示することが強制されているか、表示はどのようにするか、表示されていない場合の効果などを規定する体系のことです。原産地の表示制度は、特恵とは無関係で、主な取引秩序の確立などに目的を置いている場合が多いです。
 
原産地の規定とは、国際貿易上取引される特定の商品がどの国で生産され、製造されたかを判断する基準などをいいます。
 
以下では、日本の原産地表示制度を中心に説明います。
 
 
■ 日本の原産地表示制度の特徴
 
日本の原産地表示制度を理解することは非常に難しいことです。以下のように整理しておくと、題した誤りがないはずと思います。
 
1)輸入通関段階で原産地を表示したか否かは問いません。
外国からある物品を日本に輸入する場合には、輸入段階(特に通関段階)で原産地を表示したかどうかは問題になりません。したがって、原産地の表示がないままで輸入しても、少なくとも輸入通関には問題になりません。 (日本関税法第71条反対解釈)
 
※原産地の表示が輸入通関、独自の要件になりかについては、国によって制度が異なります。
ㅇ原則としてすべての品目について原産地の表示を強制する国(米国など)、
ㅇ義務的な原産地の表示対象品目を別途定めている国家(韓国、台湾など)、
ㅇ原産地を表示したか否かが輸入通関に影響しない国(日本など)
 
2)しかし原産地を表示した場合、正確に表示する必要があります。
上記の説明したように、日本への輸入で原産地を表示したかどうかは強制されませんが、一旦表示した以上の事実を表示しなければならず、虚偽の表示または誤認を誘発することができる原産地表示をした場合、輸入が許可されません。(日本関税法第71条)
 
税関は、虚偽の、誤認する恐れがある原産地が表示された物品について、原産地の表示を訂正させて通関させるか、または外国に返送させることになります。
 
3)日本内の流通段階では、原産地の表示が強制される品目があります。
日本へ輸入された物品を日本内で流通させる場合、法令によって原産地の表示義務が付与された代表的な品目が、食品です。
 
次に、業界の公正競争規約によって日本内で流通させるために原産地の表示が事実上強制されている品目が存在します。
 
理論的には輸入時原産地の表示をせずに、日本内の流通のために別々に原産地の表示をすれば良いことだが、物品が多い場合、非常に手間がかかるだけでなく、新たに費用が支出されることなので、最初から原産地の表示などのラベリング作業をして輸入するのがよいでしょう。このような観点から見ると、特定の品目については、輸入時から事実上の原産地の表示が強制されると考えられます。
 
4)業界の自主規約というものが存在します。
文字通り、同種の品目を扱う企業が"自主的に"公正競争規約を結び、特定の品目について原産地を表示することを約束する制度が存在しているところ、これは他の国では見つけるのが難しい制度です。
 
しかし、実際にはその規約を国が認証していて、その規約に違反した場合、違約金の賦課は、協会からの撤退など現実的な不利益が従っているので事実上は強制力を持つことになります。
 
 
■ 義務的な原産地の表示対象品目(日本での販売、流通段階での適用)
 
1. 食品類 - JAS法上の表示対象
 
☉ 根拠
 
☉ 表示内容と表示場所
 
☉ 義務表示対象品目
 
1)生鮮食品(生鮮食品品質表示基準 - 農水酸告示)
① 農産物
② 畜産物(単純カット、薄く切ること、単純な冷蔵や冷凍を含む)
③ 水産物(冷蔵、冷凍、生きているもの、刺身、切り身、フィレットにしたもの等を含む)
 
2)加工食品(加工食品品質表示基準 - 消費者庁告示)
 
3)遺伝子組換え食品(遺伝子組換えに関する加工食品の表示基準 - 消費者庁)
 
 
2.公正競争規約による原産地を表示
 
☉ 公正競争規約の根拠、概念
 
☉ 公正競争規約の意味
 
☉ 公正競争規約と原産地の表示義務
 
☉ 公正競争規約上原産地表示義務品目群
 
 
■ 原産地の表示方法など
 
1)関税法上の表示方法
 
2)輸出入取引法上の表示方法
 
3)不当景品類および不当表示防止法上の表示方法
 
4)一般的な原産地の表示方法
 
5)原産地の虚偽表示、誤認する恐れの表示などの事例
 
 
■ 原産地虚偽表示などの規制
 
1)関税法による虚偽表示輸入物品等規制
 
2)輸出入取引法による虚偽表示輸出規制
 
3)外国為替及び外国貿易法 による誤認表示輸出規制
 
4)不正競争防止法による規制
 
5)不当景品類および不当表示防止法による規制
 
 
■ 原産地決定基準
 
☉ 概要
 
論理的に原産地(原産国)の表示を強制すること、虚偽表示、誤認表示などを判定するためにはどのような基準で原産地を決定するかについての基準が必要です。
 
ところが、原産地(特に原産国)の決定基準については、世界的に統一された基準が存在しません。それにも輸出入物品の原産地がどこなのかを確定することは国はもちろん、輸出入者の理解関系にも非常に重要なことなので、各国は自らの決定基準を定めているか、国際条約を通じて原産地を決定する基準を定めています。
 
原産地を決定する基準は、原産地によって特典を付与するためであるかどうか、および規制法令の趣旨、国際間の協定の内容、品目ごとの特性に応じて変わるので、WTO協定文には、一般的に通用する原産地決定基準の例を挙げるとすれば次のとおりです。これらの基準は、日本の関税法など、いくつかの法令に反映されています。
 
☉ 完全生産基準(Wholly obtained goods rule)
 
☉ 実質的変更基準(Substantial Transformation rule)
1)関税番号変更基準(Change in Tariff Classification rule)
2)付加価値基準(Value added rule)
3)加工工程基準(Specific Process rule)
 
 
■ その他
 
日本の原産地表示制度を明快に理解することは簡単ではありません。
 
日本との貿易において、最も望ましい方法は、自分の品目が日本内の流通段階での義務的な原産地の表示対象であるか、または公正競争規約上の表示条件がある品目であるか否かを事前に調査し、できる限り事実且つ正確に表現するのが、現在の解決法だと考えてよいでしょう。






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